「あきない世傳 金と銀 本流編 六」高田郁著:いよいよ幸が江戸へ打って出る!がんばる女性に読んでもらいたい小説。(ネタバレあり)

高田郁著の「あきない世傳 金と銀 本流編 六」が2019年2月14日に発売されました。
高田郁ファン、あきない世傳ファンとしては、待ちに待った六巻目の発売です。
振返ってみると、毎年2月14日に発売されていて、高田郁氏から読者へのバレンタインデーのプレゼントの様です。「ありがとうございます!」と、著者に伝わるなら心から伝えたいものです。
発売されてから、読み終えるまでの時間は、ほんっと!至福のひとときでした。

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悲しみから立ち上がり、いよいよ江戸へ打って出る

5巻目の終わりでは、五鈴屋の三男 智蔵が六代目を継ぎ、そして想い合っていた主人公 幸と夫婦になれるが、それももつかの間・・・。
智蔵は積聚が原因で喀血し、急逝してしまう。

6巻目は智蔵の葬儀の場面から始まります。

人は心底悲しい時、却って涙が出なくなるものです。これは自分も経験があるのですが、感覚や感情が全て麻痺してしまうのですよね。
防御反応とでも言うのでしょうか。深い悲しみを感じてしまったら最後、一気に悲しみに飲み込まれてしまい、自分がどうなってしまうか分からないほど、感じるのが恐ろしいのです。
感覚という感覚、感情という感情を一切シャットアウトしてしまいます。
まさに、幸はそのような状態。

人によっては、目の前の一連の儀式をただ淡々と、感情を殺してやり過ごす人もいれば、立っていられないほど人としての機能をしなくなる人もいます。
(そんな人を実際に目の当たりにしたことがあります)
幸は前者で、まるで「嘘」のシナリオが、目の前に繰り広げられるごとく、それらをぼーっと眺めているだけなのです。
”生きているのに生きている気がしない”

一方、悲しみの中ではありますが七代目を決めなければ五鈴屋が潰れてしまうという現実は待ってはくれないのです。
江戸時代の大阪では、女性が跡目を継ぐことができない「女名前禁止」という掟があるため、幸は継ぐことができません。

そんな中、幸は期限付きの「七代目」となることを、天満組呉服仲間から取り付けることに。
また、六代目智蔵の悲願であり、商習慣が大阪ほど厳しく無い江戸へ進出を決めるのです。

これから経営者になりたい女性、現役女性経営者に読んで欲しい

まだ経営者としてはぺーぺーの自分が言うのはおこがましいのですが、これから経営者になりたい女性や現役女性経営者にぜひ読んで欲しい小説です。

大阪での厳しい商習慣の中、主人公「幸」は知恵と才覚で、また店の面々に支えられながら、新しい風を吹き込んでいくのです。
例えば、女性には認められなかった跡目を継ぐことを「期限付きで」と奔走し承認を取り付けます。
それはこれから女性たちが社会進出するための開拓者となって、自ら前例をつくりやがてそれを慣例にしていきたいという野望を持っています。
現代の日本では、そのような習慣はなくなり女性でも自由に会社を立ち上げることが出来ますが、男性には無い”女性ならではの数々のハンディ”がいまでもあります。

例えば、オフィスを設けるために、女性では借りられない事業用不動産物件が本当に多く今でもあります。私自身、非常に苦労しました。
まだ会社勤めをしている最中に物件を探していたので、”会社”という信用を利用することが出来たのですが、女性フリーランスでましてや独身ならなおさらの事、そのような物件を借りようものなら断られることの方が多いのです。

けれども、幸も現代の女性経営者の先輩方々も、そのようなハンディを、知恵を絞りアイデアを捻り出して、仲間に助けてもらったりして、乗り越えてきています。

また、江戸店を出すにあたって「買っての幸い、売っての幸せ」つまりWin-Winの関係の商売をするにはどうすれば良いのかを、店の主従に関係なく知恵を出し合って、ひとつの目標に向かって力を合わせていく場面が、何度も何度も出てきます。

それに加えて、大阪でも江戸でも女性の奉公人は「女衆(おなごし)」と呼ばれる家事一切をやらされるか、下女として下働きしか道が無いところを、才能のある女性を「小頭役」という新しい職を作り任せるという大胆な人事改革も行うのです。

最後の場面では、開店直後に来た貧しい女性を、大切なお客様として扱うお店の姿勢なども、非常に参考になります。

がんばる女性を描く高田郁

「あきない世傳 金と銀」の他に、高田郁の代表作として「みおつくし料理長帖」全10巻があります。
こちらも、澪というみなしごの女性が料理人として独り立ちしていく様が描かれています。

高田郁の作品には「頑張る女性応援歌」とも言える作品が多く、自分自身が心に元気が無くなっていたり、仕事上で困難が立ちはだかった時にに読むと、背中を押された気持ちになり、「私もがんばらにゃ!」と思えるのです。

今回の六巻目は、江戸店が開店した場面で終わっていますが、そこまでの苦難の物語りに、読みながら何度も何度も涙が止まりませんでした。

自分がくじけそうになったら、また読み返してパワーをチャージしたいものです。

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