納豆について学ぶ。納豆菌最強説、その理由は?

金沢・北陸で発酵の学びを深めています。
今回は「納豆」について学んできました。

納豆と言えば「麹菌」の天敵と言われています。
そのため、日頃、麹菌を扱っている身としては、納豆は食べません。
そもそも納豆は苦手で、その苦手を克服したのは30歳ごろでしょうか。納豆歴は短いのでいとも簡単に絶つことはできます。
しかし、嫌い・扱えない というだけで、学ばないという理由にはなりませんので、ここはがっつり納豆の勉強です。

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納豆は麹菌の天敵?

発酵クラスの際に、「納豆菌は麹菌の天敵」と説明します。
これが100%正しい説明かと言うと実はそうで無くて、”天敵”という言葉を便利に使っているところがあります。

納豆菌は麹菌を食うのでは無いのです。
例えば同じシャーレの中に、麹菌と納豆菌を置き、27℃~32℃ぐらいで培養したとします。
納豆菌は麹菌の倍速で成長し繁殖するため、麹菌のテリトリーが無くなってしまいシャーレの中を納豆菌に凌駕されてしまいます。
この繁殖力が、他の酵母や菌にとって脅威なだけで、取って食われる訳では無いのです。

しかも生命力は非常に強い菌です。
納豆菌は熱湯消毒をしようとしても100℃では死なないのです。
人間の致死量のおよそ3000倍のガンマ線量(1万グレイ以上)を照射されても生き残ることが出来たり、紫外線にも強かったり、超真空にも耐えられたりします。

そのため、麹をはじめ、酵母が必要なワイン醸造所、酒蔵の蔵元や、味噌蔵では、忌み嫌います。
例えば、酒蔵では自家で麹を作ります。麹菌を米に植えて、米麹を作る際に納豆菌が混じっていた場合は、麹が育つ代わりに納豆菌が育ってしまうことになります。
するとどうなるかというと、「すべり麹」というヌルヌルとした麹となり、日本酒の原材料として使うことが出来なくなります。
すべり麹になってしまっても、熱湯消毒が出来ないため、薬品で消毒をすることになり、その酒蔵に住み着いている蔵付きの菌までも殺すことになってしまうため、致命的なこととなります。

そのため、自分の発酵食クラスではもう「納豆は麹の天敵」と言って説明し、醤油や味噌を仕込む時には食べないようにお願いしています。

納豆菌とナットウキナーゼ

ではなぜそんな最強の納豆菌が世の中に蔓延していないのでしょうか?

それは、納豆菌にも天敵がいるからです。
あああ、名前を失念したのですが(思い出し次第更新します)、その菌は土の中に生息しています。
そのため納豆を作っている工場では、履いているゴム長靴の土や埃にに非常に気を使います。

納豆菌とは、 Bacillus subtilis var. natto バチルス・サブチリス・ナットーのことです。
枯草菌の一種です。

納豆菌は、発酵することによって、ナットウキナーゼ、ビタミンK2、アミノ酸類(ポリγ-グルタミン酸)を生み出します。
早い話し、少し乱暴な説明ではありますが、納豆菌は発酵してナットウキナーゼを生み出してネバネバになり食卓に並びます。
この時すでに納豆菌はナットウキナーゼになっており、家庭で納豆を食べても100発100中で麹をダメにしてしまうかと言うとそうでも無いのです。
ナットウキナーゼは温度60℃で死滅します。つまり熱湯消毒で殺せる菌になっているのです。きちんと熱湯消毒すれば、麹菌に悪さをするという事はありません。

しかし”菌”は目に見えません。そして、誰も彼もがいつも熱湯消毒し暮らしている訳ではありません。
なのでやはり自分の発酵食クラスではもう「納豆は麹の天敵」と言って説明し、醤油や味噌を仕込む時には食べないようにお願いしています。
※大切なので2度言ってみました。

金沢大学 牧教授の生み出した「空なっとう」

さてこの日は、金沢大学の牧教授の講義からスタートです。
この先生はいわゆる菌オタク。
いろんなところから、いろんな菌を採取して研究しています。

なんと、名古屋空港から、天井が開いているセスナ機を飛ばし、能登半島の上空の菌を採取
そもそもはタクラマカン砂漠の上空の菌を調べていたところ、かなりの高度でも菌は存在していることが分かり、それなら地元の上空の菌も採取してみようという事になったそうです。

なんと、能登半島の高度2000メートル~3000メートル上空の菌を採取してみたところ、80%が納豆菌であるバチルス菌。
乾燥と熱に強いという納豆菌だからこそでしょう。また、紫外線にも強かったり、超真空にも耐えられる菌です。

推測するに、サンプルとして牧教授は地元の上空の菌を採取した訳ですが、能登半島上空であろうと東京の上空であろうと、日本列島の上空は多少の差はあれど、生息する菌の種類はそう差は無いと思っています。

採取したバチルス菌つまり納豆菌を培養して、金沢市の隣の白山市にある地元納豆メーカー「金城納豆」さんと”売れる納豆”作りがスタート。
写真の右側のSi-39株の方が味としては美味しいのだそうです。
しかし、このSi-39株は粘りが少なく、いくら美味しくても「粘って」こその納豆。
私自身は、美味しけりゃ良いじゃないかと思うのですが、一般消費者にとっては美味しくても粘りが無いと不良品としてクレームしてくるのだそうです。
イメージって怖い(笑

そこで、Si-39株よりも若干味は落ちるが、粘りのあるSi-37株で空納豆が作られることとなったそうです。

”粘りが無いけど美味しい納豆”は、味にうるさくて納豆嫌いが多い大阪ではウケるのでは?ということをジョークとしてスライドに載せていましたが、誰も笑う人無し。。。すべった

金城納豆さんでの納豆開発の様子。

能登半島上空で採取した空納豆の原液。

こっ・・・怖い・・・菌が体に付着してキッチンに持って帰ったらどうしよう?という心配は、もうすっかりぶっ飛ばされまして、納豆菌の原液を水で希釈した納豆水を飲むことになりました。
まぁ体当たりブロガーなので、当たって砕けましょう。
帰りに何処かの温泉で禊をして帰ることにしようと心に誓いながら飲んでみることに。
原液は蒸れた靴下の香りでしたが希釈すると無臭に近いです。
最初はサラサラとした普通の口あたりでしたが、体温のせいでしょうか?口の中でネバネバしはじめました・・・。
塩素で歯を磨きたい・・・(涙)でも塩素口に入れたら死ぬな・・・

金城納豆さんからのプレゼント

牧先生の講義の次は、金城納豆さんの講義です。
なんと、ひきわり納豆用の大豆と空納豆の納豆菌を頂きました。これで、自家で納豆を作ってみるようにとの宿題です。
ひきわり納豆の場合、機械にかけて外皮(薄皮)を剥く→大豆を砕く→大豆を蒸す→菌を植える→納豆菌を培養 という手順となります。
通常の納豆は納豆を砕く部分がありません。つまりここだけ手間がかかっているそうです。ただし、ひきわり納豆の方が菌が付着する面積が増えるため、栄養成分は丸大豆納豆より上だそうです。

納豆の栄養素は、
・タンパク質
・カルシウム
・鉄
・亜鉛
・ビタミンK
・ビタミンE
・ビタミンB2
・葉酸
・食物繊維
これらが豊富に含まれており、特に・鉄・ビタミンK・ビタミンB2・葉酸の量が100gあたりに含まれる量が多いため、貧血気味の人にはとても良い食品となります。
栄養バランスが良い食品なので、これにネギを入れて(ビタミンCと食物繊維を加える)食べると、一品で完璧な食事となります。

そして、金城納豆さんの製品をプレゼントされました。

これが「空なっとう」
金沢市内のホテルに泊まると、朝食としてよく目にします。

こちらの「ホテルビスタ金沢」の朝食にも「空なっとう」が登場しました。

そしてこれが、金城納豆さんの製品。

これらの他に、富山県産の大豆を使った納豆もそれぞれ試食しました。
また、納豆に添付されているタレを使わず、ごま油・オリーブオイル・塩麴・しょうゆ麹・七味などで食べ比べしてみました。
一言でいうと、”塩気の無い納豆は不味い”というのが感想です。塩気のあるもので食べると良いでしょう。

よく、納豆に添付されているタレは、醤油ではなくて、様々な食品添加物で作られている場合は多いですが、金城納豆さんのタレは、地元産の醤油ベースで作られているのだそうです。
(だたし、ベースね、ベース)

質疑応答タイム

そして、質疑応答の時間に、私からした質問は
私「味噌蔵などは、味噌の消費量が減って、営業活動に苦労されているようですが、納豆の消費量はどうなのでしょうか?」
金城納豆さん「納豆の消費量は、年々増加しています。テレビの健康番組や、いろんなメディアで納豆を食べることによる効果をあちらこちらで取り上げられています。そのせいか生産が追い付いていないメーカーが多いです。日本トップ3の納豆メーカーは今年、納豆の価格を上げました。表向きは原材料の不足ということですが、値段を上げることによって消費を抑制しようという狙いです。しかし、納豆熱は過熱する一方で値上げの本来の効果は無かったです。」
なんと、納豆メーカーさん、儲かってまんなー!

他の質問としては、
Q「納豆の価格の差は何の差?」
A「日本で納豆のために使われているのは遺伝子組み換えで無い大豆。遺伝子組み換えの大豆はどこのメーカーもまず使わないのです。輸入大豆を利用しても税関ですでに振り分けられます。なのでよっぽどのことが無いかぎり、材料の差はありません。
売り方の問題で、日本で一番安い納豆はドラッグストアで売っている納豆。これはドラッグストはは納豆で利益を上げる必要が無いため客寄せのために超薄利で売りますので、材料の差が無い上に安いです。スーパーや小売店は納豆で利益を上げなければならないので、値段が上がります。そういう仕組みです。」

Q「納豆の賞味期限は過ぎていても大丈夫?」
A「大丈夫です。賞味期限過ぎると次第に納豆は乾燥してきますが、栄養素的には何も問題ありません。」

納豆を使ったお料理の試作

金城納豆さんの納豆を使って、納豆麻婆豆腐と塩納豆を作りました。
納豆麻婆豆腐は、パンチの無い出来上がりとなり、まだまだ改良が必要ですね。

その後、これまた発酵食メニューの開発。
一緒に開発しているメンバーとあーでもないこーでもないと、試作しては試食を繰り返し。

まとめ

今回も深くて有意義な学びとなりました。
納豆はすべて生活から切り離していましたが、あまりにも栄養バランスが良いので、どうにか日々の生活に取り入れたいものです。
しかし、やっぱり菌は目に見えないので、どこでどう悪影響があるかが分からないため難しいですね。
まぁ私の立場が特殊なだけなので、ぜひ日本人の食生活に積極的に取り入れて欲しい食品です。

ひきわり納豆の自家作成は、自宅でもキッチンでもやらない予定です。
どこかの台所を借りて(他所のキッチンスタジオでも借りてやろうか?という悪魔の思惑w)やりたいものです。
もしくは焼却でしょうか。しくしく。

そして、発酵の世界は奥深くて面白い!と今回も心底思った次第です。

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