「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」を金沢21世紀美術館で体験

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」を金沢 21世紀美術館で体験してきました。

広告

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」とは

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」とは、ひとすじの光も無い世界へ入り、視覚を全て遮断します。
視覚以外の人間が持つ感覚「聴覚」「触覚」「嗅覚」「言葉のコミュニケーション」を使い、様々な体験をする企画です。

真っ暗闇の世界では、その世界のエキスパートである視覚障がい者のアテンドにより、グループになってお互い会話しながら、助け合いながら、21世紀美術館の中を巡っていきます。

今回は、場所柄「作家の工芸品」を「聴覚」「触覚」「嗅覚」「言葉のコミュニケーション」で鑑賞する内容でした。

真っ暗闇の世界を体験したことがありますか?
私はほぼありません。
東京に住んでいると24時間僅かな光も無いところなど、そうそうありません。
住宅街には街灯が煌々と照らされ、治安を守ってくれています。
繁華街では”不夜城”のごとく煌びやかなネオンが溢れています。
静かな場所に行こうとも、昼は太陽、夜は月明かりや星のきらめきで、決して真っ暗闇ということは無いのです。

全盲の方は常にこの暗闇の中が生活の場です。
「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」を体験するまでは、暗闇とは孤独で恐ろしいところだと思っていました。
しかし、今回の体験によって、それは全くの思い込みであることを知ったのです。

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」体験前の説明

事前予約が必要で、16:15の回に参加しました。
受付を済ませると、小部屋に案内され、そこで荷物を預けます。
この時に、アクセサリー類は全て預けます。真っ暗闇なので落とすと見つけられないからです。
また、Apple Watchなど光が出るものも全て預けます。

荷物を預け終わると、同じグループの人たち自分を入れて10名が集まり、椅子に座って時間まで待機します。

時間になると、スタッフに更に奥の薄暗い部屋へ案内され、これから体験することと、アテンドしてくれるタエさんという方を紹介してくれました。

タエさんからは、視覚障がい者が持つ白杖(はくじょう)の持ち方から使い方を教えてもらえます。
それと、動く時のルールとして、自分が何をしているのかを言葉にして周りに伝えることを説明されました。
例えば「しゃがみます」「杖を置きます」「立ち上がります」などです。
自分の動きを出来るだけ具体的に伝えて、お互いの安全を図ります。

また、物の「触り方」も教わります。
手のひらで触ると、力を出しやすいことから相手の人や物を押し倒してしまうため、「手の甲で優しく確認してから、手のひらで感じる」のだそうです。

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」を体験する

説明の後、真っ暗な部屋へ進みます。
そこでお互いの自己紹介です。

しかし、アテンドしてくれるタエさんを含め10人の人の呼び名を覚るのは難しいため、「名前が覚えられるゲーム」がスタートします。

ゲームは2つ。
内容は伏せますが、声と相手にタッチすることを頼りに、感じたことを具体的に説明することになります。それをしっかり聞き耳を立てて、タッチされたら、触られた方向、感触をキャッチします。

これが思いの外、感覚がフル回転するのです。
ゲームをしながら全員で1つの目標を達成すると、それまでは他人だった10人にチームワークが生まれました。
コミュニケーションによるゲームが目で見える時よりも、親密さを生み助け合う事を知ります。

最初のゲームで結束感が生まれたところで、次の部屋へ進みます。
進むときも「右ですよ」「右に行き過ぎると壁があるので気をつけて」などお互い声を掛け会いながらとなります。

やがて、次の部屋に到着し、そこでは椅子に座って、全員が同じものを触り、触った物の感触や匂いを伝え合って、何を触っているのかの答えを探します。
最終的には「答え」は教えてもらえませんが、同じものをそれぞれが感じる説明から、想像を膨らませていくゲームとなります。

2つ目のゲームが終わったところで、次の部屋へ移動していきます。

そこは寝転べるエリア。
全員が寝転んだり、起きたり。
そして、そこでは「美術工芸品」を全員に1つずつ違った物を渡されます。
それを、どんなものかを1人ずつ、全員に対して説明していくのです。

形からすぐに何か分かる人、全く何に使う物なのかわからない人。
大きい物の人、小さい物の人。
それぞれです。そしておのおのが一生懸命言葉で伝え説明していきます。
このゲームにも「答え」は教えてもらえません。
しかし、それぞれの頭の中に、言葉から誘導されて浮かんだ映像が答えとなるのです。

美術工芸品を体感するコーナーが終わると、次の部屋へ移動します。
そこは、光のある世界に戻るために薄暗くした部屋です。
そこで、それぞれの感想をシェアし合い、徐々に光に目を慣らしていく時間となるのです。

「美術館」ということもあり、最後にそこで一枚の大きな和紙を渡され、全員で自由にその和紙を分け合い、それまでのコーナーで感じた事を和紙とペンを使って表現することになります。

最後に和紙で作った自分の作品をシェアしあうことが最後の体験となります。

感じたこと

この記事の最初に「暗闇とは孤独で恐ろしいところだと思っていました。」と書きましたが、その思い込みがすっかり塗り変わっている事に気付きました。

真っ暗闇の世界は、とても楽しくて親密で安心できる豊かな世界だったのです。

人は目から入ってくる視覚情報に惑わされていることが多過ぎて、他人の表情から気持ちを深読みし、気を遣って心にも無い事を言うことがあります。

しかし、見えないのですから、表情を読む必要がありません。
相手が発する言葉を頼りに、自分はどうしたいかを素直に考え行動できるのです。
目で見える時よりも「相手がどう思っているのか」よりも「自分がどうしたいのか」をしっかり自分に問いかけられます。

また、暗闇は孤独で寂しいところだと思っていましたが、決してそうではありませんでした。
誰かに触れて所在を確認し、誰かに話しかけて状況を知る、”誰か”を常に探す事。それによって孤独感を感じないところか、相手の存在のありがたさや安心感がとても増すのです。
普段の生活で、全く他人とグループになった時、ベタベタと触ることはありませんし、積極的に声を掛けようなんて思いもしません。
しかし、暗闇の世界では触るのも触られるのも当たり前。そして相手に思いやりを持って情報のキャッチボールが生まれます。

暗闇の世界では、目を開けていても閉じていても同じ状況になります。
すると「想像力」がフル回転になります。
相手から受け取った言葉の情報を整理しつつ、頭の中には映像が浮かんだり、数字が飛び交ったり。
その想像した映像は、目でキャッチする情報とは違った物になる可能性もありますが、目だけでは受け取りきれない、まるで宇宙サイズのイマジネーションの世界が繰り広げられる面白さがありました。

そう、脳内は無限なのだなと思わされると同時に、脳内だけは誰にも真似されない完全オリジナルの世界なのだと気付かされました。

無限に広がるオリジナルの世界は、なんと豊かな世界なのだろうか

真っ暗闇の世界は、決して無彩色で無味無臭な世界では無いのです。
見える物理的な世界を無限に越える、自由自在に色彩を変えられるとてもカラフルな世界なのです。

視覚障がい者の方たちは、見える物理的な世界で不自由を感じることもあると思います。しかし逆に言うと「物理的な狭い世界においてだけ」なのだと思うのです。
それ以外のもっともっと次元を超えた世界があり、そこには果てしない自由が存在しました。

最後に

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」のラボが、私の仕事場である浅草橋にあります。
そんなことから、前々から体験したかった「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」をこのタイミングで、美術館というロケーションで体験できたのはラッキーでした。

「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」の他に「「ダイアローグ・イン・ザ・サイレント」(音の無い世界)も体験できます。
これは2019年夏に東京・新宿で2度目の開催があるので楽しみにしています。

今回は、某放送局のTVクルーも同行することになり、自分たちの体験を一部始終撮影・録画されることになりました。
2019年1月にBSで放送されるそうですので、放送日・番組名が分かり次第、このブログで紹介したいと思います。

ぜひ、この豊かな世界を実体験・テレビでのバーチャル体験をしてみてもらえると、新しい世界が開けるのではと思います。

  • ブックマーク

スポンサーリンク