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「ペリリュー 楽園のゲルニカ」武田一義 著:日本漫画家協会賞受賞作 戦争の悲惨さ虚しさを後世に語り継ぐために

望んで戦地に赴いた人は数少ないと思います。
誰もが平和を望んで止まないのです。
しかし、歴史の歯車が狂って起きてしまった太平洋戦争。
いかにその戦いが虚しくて、多くの命をあっけらかんと奪って行ったかを、この漫画は訥々と伝えてくれています。

ペリリュー島の戦いから生還した兵士への取材や、従軍関係者への取材を通して、史実をそのまま伝えてくれるこの漫画は「日本漫画家協会賞」を受賞しました。

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ペリリュー島の戦いとは

ペリリュー島とは、南洋のパラオ諸島の南に位置しています。
すぐ、西にはフィリピンがあり、すぐ南にはパプアニューギニア。

島には、第一次世界大戦で日本が入植し、滑走路が作られました。

その滑走路は、南の島の楽園を悲惨な戦場に変えてしまうきっかけとなるのです。
西にあるフィリピンを攻めたい米軍は、その中継地として滑走路のあるペリリュー島を奪いたいのですが、日本としてはフィリピン攻撃への足掛かりにされないために、必死の防衛線を繰り広げるのです。

簡単に言ってしまえばそうなのですが、そもそも第一次世界大戦で日本が奪った島。
米軍からすると、日本から解放するためという立場になります。

ここでの戦いは第二次世界大戦から約1か月後に起きたのです。
約2年に渡る長い戦争の、わずか1か月目で、第1海兵師団が玉砕した悲惨な戦いとなるのです。
”戦死者 10,695名
捕虜 202名
最後まで戦って生き残った者34名”
※Wikipediaより

戦いの最後の日本軍では「万歳突撃」が起き、大切な命が儚くも消えて行ったのです。

漫画 ペリリュー 楽園のゲルニカ

漫画では、この”悲惨”以外の例えようの無い、燈篭の斧の様な激戦を描いています。
3頭身のデフォルメした”かわいい”ともいえる画風が、その悲惨さのクッション代わりになっていて、目を背けることなく物語の中に入って行くことを手助けしてくれます。

主人公は、漫画家志望の田丸一等兵。
もちろん望んで出兵した訳では無く、徴収された一般兵となります。
どちらかと言うと、ひ弱で、争いを好まず、上長の軍曹には事あるごとに殴られたりしているタイプです。
『生きて国に帰りたい。国に帰ったら絵や漫画を描きたい』そして、日本に残っている母や妹を心の支えに奮闘しているのです。
この戦いに出兵した日本兵の平均年齢は、20歳~24歳なのだそうです。

3巻まで発売されていて、日本軍の大将である中川州男大佐(戦死後、中将)が、アメリカ軍の猛攻に耐え忍び切れず自決するところで終わっています。
この時点で田丸一等兵はまだ生き残っており、この後どうやって生き延びて行くのかが4巻以降のストーリーとなるのだと思います。

感想

もちろん自分では戦争を経験した事がありません。
戦争という言葉を聞きたくも無いし、知りたくも無いと思っていました。
しかし、戦いという事は非常に無意味だと一方的に言うのでは無くて、過去にどのような無意味で悲惨でやるかたない事が起きていたかを知るのも大切かと思うのです。

触れたく無い・・・知りたい
この気持ちの天秤を”知りたい”という方へ傾けてくれたのが、この漫画だったのです。
表紙の絵を見ました?
かわいいじゃないですが、挿絵が。。
このかわいさが、心底救われる気持ちになれるのです。
たぶんこの作者の絵で無ければ、恐ろしくて過去のパンドラの箱は開けられなかったと思います。

読みやすい漫画で知るペリリュー島の戦い。
ぜひ手に取って過去の、日本の過ちに目を向けるのも良いのではと思います。

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