先日観に行ったバレエ公演に引き続いて、個人的にバレエウィークが続いております。
バレエ・スプリーム Ballet supreme Bプログラム: パリ・オペラ座バレエ団と英国ロイヤルバレエ団。世界二大バレエ団の夢の共演
表舞台を観るのもバレエを楽しむ一つの方法ですが、裏舞台を観るのも舞台や作品の理解を深めるためにとても為になると思っています。
バレエ公演は大抵2時間半から3時間の長さで興業されます。
一方それに至るまでのリハーサルや練習時間の方がはるかに長く、ダンサーたちがどのような想いを込めて舞台に挑むのかを知ることで、観客も作品に対してまた違った理解や感想を得ることができると感じています。
自分もかつては舞台に立っていた時に、長いリハーサル時間を経て来ました。
練習やリハーサルで起きるドラマが、自分たちが伝えたいテーマをさらに増幅させ深みをまして行ったことを身を以て体験してきて、ぜひこの”舞台裏”を覗いて観て欲しいと思うのです。
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世界的バレエ団 パリ・オペラ座の舞台裏ドキュメンタリー映画
東京 渋谷 Bunkamuraにある ル・シネマ では、「映画「パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち」が上映中です。
この映画はドキュメンタリー映画となっていて、華やかな本番の舞台シーンはほとんどありません。
レオタード姿や練習用のチュチュで、汗で流れてしまうのでほぼノーメイクのダンサーたちが画面いっぱいに現れて来ます。
実は、映画が終わったあと、すぐ後ろの席の女性2人連れが「これ、バレエの映画じゃなかったの?」という不思議な会話をしていたのが、漏れ聞こえて来ました。
多分、きらびやかな世界がスクリーンに登場してくると思っていたのでしょうか。
もし、1つのバレエ公演の練習から本番終了までを100%とするならば、100%の中の時間の本番はほんの1%程度の時間でしか無いのです。
氷山は90%が海中で10%が目に触れる海上のため、その氷山の一角よりも少ないところでしか観客の目には触れていません。
ですので疑問に思うのも無理はないと思います。
しかし、その練習風景すら、私には美しいと感じました。
第一線を退いたばかりの元ダンサーと、現役第一線で活躍しているダンサーへのバトンを繋ぐ風景が観られる
映画のタイトルが”夢を継ぐ者たち”とある通り、現役ダンサーのリハーサル風景が撮影されています。
多くのトップダンサーが登場するのが心ときめきます。
●パリ・オペラ座 エトワール マチュー・ガニオ
男性ダンサーとして、今一番ノリに乗っている踊り手。
まるで彫刻のように美しい完璧なプロポーション。美貌。絵から抜け出たような”ノーブル”なルックス。現代の貴公子と言ってもいいでしょう。
●パリ・オペラ座 元エトワール アニエス・ルテスチュ
マチュー・ガニオのパートナーとして登場します。2017年8月現在はすでに引退していますが、おそらく映画を撮影していた頃はまだ現役のエトワールだったため、映画にはダンサーとして登場しています。
●パリ・オペラ座 エトワール ステファン・ビュリオン
アニエス・ルテスチュのパートナーとして登場しています。
マチュー・ガニオが貴公子なら、ステファン・ビュリオンは美しい騎士(ナイト)とも言える、逞しく見栄えの良いダンサーと言えます。
●パリ・オペラ座 プルミエール・ダンスーズ オニール・八菜
今一番急成長中の注目のダンサーです。彼女がエトワールになる日はそう遠く無いと感じています。
●ロシア マリインスキー・バレエ団元エトワール ウリヤーナ・ロパートキナ
非常に残念なことに、つい先ごろ2017年6月に引退を発表したウリヤーナ。おそらく映画を撮っていた時は、現役ダンサーだったからでしょう。
彼女の長い手足と、長身のプロポーションで踊る白鳥の湖のオデット姫は、本物の白鳥そのものでした。
ドキュメンタリー映画のありがたい点は、今はもう観られなくなってしまった彼女のリハーサル風景がこうやってスクリーン越しに観られることだとしみじみ感じました。
●そのほか、フランス・ロシアを含め3人のダンサーが登場します。
それを指導するのが、現役を引退したアニエス・ルテスチュ、ジャン=ギョーム・バール
二人ともパリ・オペラ座の元エトワールです。
エトワールまで登り詰めたダンサーが、若手を指導しリハーサルへ導き本番を成功させるのです。
特に、まだ若いオニール・八菜を舞台袖で手取り足取り細かく指導する、アニエス・ルテスチュが印象的でした。
エトワールまでの地位にあった人が、このように細かく丁寧に指導するなど、日本ではあまり見かけないのです。
(こんなことを言っては悪いですが、、、自分のことで精一杯の方や、自分が神であるかの様に振る舞う人、まるで神の様に扱う周りの人々。そんな風景ばかり目にします。)
ただし、インタビューの中でアニエス・ルテスチュが言っていましたが、かつて自分が指導される側だった時に、ルドルフ・ヌレエフは、才能のあるダンサーには(ヌレエフが現役の頃から)、手厚く次世代のダンサーを指導していたそうです。
おそらく、同じ様にアニエス・ルテスチュやジャン=ギョーム・バールは、才能溢れる若いダンサーに惜しみなく自分が持っている知識・技術・感性の全てを継ないでいるのだろうと思います。
こうやって脈々と伝統は受け継がれ、また新しいテクニックや解釈が継ぎ足され、芸術は進化して行くのだと。
この映画は、バレエという芸術を少しでも知って見ようかと興味が湧いた方にはぜひおすすめしたいです。
美しいだけでないバレエ。
伝統のある芸術のバレエ。
そんな姿を垣間見られます。
映画の情報
現在、東京では、渋谷 Bunkamura ル・シネマ で上映中ですが、「映画「パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち」
全国各地で上映中・もしくは順次上映されています。
劇場情報はこちら
夏休み、涼しい映画館で芸術に触れるひと時をどうぞ。
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