映画「ミルピエ パリオペラ座に挑んだ男」を観てきました。
バレエのドキュメンタリー映画です。
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バンジャマン・ミルピエとは
バンジャマン・ミルピエとは、一体何者???
バレエファン以外の人には、”ナタリー・ポートマンの夫”と言った方が分かりやすいかも?
フランス人ですが、パリ・オペラ座バレエ学校出身では無いです。
どちからと言うとアメリカのエンターテイメント性の強いバレエの世界にいた人です。
ニューヨーク・シティ・バレエ団(以下NYCB)のプリンシバルでもあり、L.A.ダンスプロジェクトの振付師でもあります。
NYCBと言えば、クラッシックバレエとモダンバレエの橋渡しをした振付師ジョージ・バランシンお膝元。
つまり、コテコテのクラッシック畑で育ったのでは無く、モダンバレエやコンテンポラリーダンスの色が濃い、現代的なバレエで育ってきた人なのです。
パリ・オペラ座バレエ団とは
「世界屈指のバレエ団を挙げよ」と言われたら、
・パリ・オペラ座バレエ団
・英国ロイヤルバレエ団
・アメリカン・バレエ・シアター
・NYCB
・マリインスキー劇場バレエ団
・ボリショイバレエ団
(あ。。。6つ。。。)
以上を挙げます。
そんな世界最高峰のバレエ団なのです。
ルイ14世が1661年に設立した、王立舞踏アカデミーが後のパリ・オペラ座バレエ団となります。
王立ですよ!王立。その後にマリーアントワネットが輿入れしたり、革命が起きたりとか、気が遠くなるほどの伝統と歴史があるバレエ団なのです。
パリ・オペラ座バレエ団は、完全なる階級制度で、
頂点が
「エトワール」
つまり星(スター)です。その下が、
「プルミエ」
「スジェ」
「コリフェ」
「カドリーユ」
と呼ばれる階級が続きます。
基本的にフランス人しか団員になれませんが、最近では外国人枠を設けて入団を許してもいます。
日本人では、オニール・八菜さんがいます。
階級は「プルミエール」つまり「プルミエ」です。
年に1度11月に行われる進級試験を受けて、進級が決まります。
ダンサーたちは、日々のレッスン・公演のリハーサル・試験のための練習という、厳しい環境の中、日々技術や演技力に磨きをかけていますが、いくら実力があっても、上の階級に空席が無ければ昇格はできません。
つまり”運”も必要なのです。
しかも階級によって踊れる役が決まってきます。
・エトワール・・・主役級
・プルミエ・・・準主役、たまに主役も踊れます。
ファースト・ソリストとして、ソロパートも踊ります。
・スジェ・・・セカンド・ソリスト。たまにソロパート。稀に主役が踊れるチャンスもあります。
・コリフェ・・・群舞の先頭や、リーダークラス。
・カドリーユ・・・群舞
パリ・オペラ座とミルピエ
格式高く、コッテコテの伝統と、厳しいヒエラルキーで構成されたパリ・オペラ座に、突如としてミルピエが最年少で2014年にパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に抜擢されたのです。
それまで、パリ・オペラ座はバレエ団改革のために、新しいレパートリーや斬新な現代作品を取り入れようとしています。
最近はコンテンポラリー作品を多く上演もしており、そのためでしょうか?パリ・オペラ座の総裁である、ステファン・リスネルが、超現代舞踏の世界でありアメリカのエンターテイメント性の強いバレエの申し子である、ミルピエを大抜擢したのです。
この映画は、ミルピエが芸術監督に就任後、初作品を作り、公演本番までのドキュメンタリー映画です。
ミルピエは現代作品を振付し、
アメリカから作品の作曲者を呼び寄せ、
NYCBのプリンシバルがリハーサル指導を行うという、
かつてない、アメリカ色の強いスタッフ陣で固めます。
作品を作るだけでなく、ダンサーの体を守るための舞台の床の張替えを指示したり、
ダンサーのための医療機関を作ろうとしたり、
(伝統がある割には、本当にひどい環境なのだなと驚き)
作品では、プリミエール以外のダンサー、つまりスジェやコリフェから主役を選んだり、
パリ・オペラ座始まって以来の褐色の肌のダンサーを起用したり。
階級制や試験制度も廃止しようと働きかけ始めます。
つまり、バレエ団自体の改革にも乗り出したのです。
1661年から続く歴史をひっくり返そうとしている訳なのです。
彼の斬新な作品作りや性急なバレエ団の改革は、あまりにも保守的なバレエ団との戦いと言っていいかもしれません。
残念ながら、ミルピエはパリ・オペラ座バレエ団を去ることになりましたが、そのエキサイティングな作品作りを映像に残せたこの映画はとても貴重なのではと思います。
ミルピエの後は、大好きだったバレリーナ、オレリー・デュポンが就任しましたが、彼女には芸術監督では無くもっともっと踊っていて欲しかったのと、またもやパリ・オペラ座の保守的な殻は破れ無かったという思いでいっぱいです。
この映画をお勧めする理由
この映画の中で、振付師がダンサーに振付をつけて行き、ダンサーがそれをどんどん形作っていく。
衣装スタッフが、持っている技術の限りを尽くして、作品にふさわしい衣装を作り上げ。
オーケストラのリハーサル、オーケストラとダンサーのコミュニケーションの現場が観られる。
世の中に存在しなかったものが、大勢の優れた人たちの手で作り上げられる映像は感動的であり、もし「舞台芸術」に興味が少しでもお持ちであれば、滅多に見られない舞台裏を知ることが出来る貴重な映像がふんだんにある映画と言えると思います。
トップの写真は、この映画のプログラムと私が3年前に履いていたトウシューズです。
まだ、押入れの中にしまってありました。
このシューズがまだ捨てられないで残してあったのは、今でも舞台芸術を愛して止まず、いつも身近に感じていたいからです。
舞台芸術は、後世に残して行きたい文化遺産でもあります。
もっと多くの人に、
舞台を知ってもらいたい、
楽しんでもらいたい、
そんな気持ちから、この映画をお勧めします。
劇場情報
映画『ミルピエ』公式サイト|2016年12月23日(金・祝)公開 |
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