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映画「あん」を 渋谷アップリンクの「見逃した映画特集2015年」で観てきた

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映画『あん』を観てきました。
2015年12月に映画『バレエ・ボーイズ』を観た際に、「見逃した映画特集2015年」が12月下旬からスタートすることを知り、その再演リストを眺めていた時に、なんだか心に刺さるタイトルを見つけたのです。
それが、この『あん』です。

映画「バレエ・ボーイズ」 を ミニシアター 渋谷アップリンク UPLINK で鑑賞 | さゆりっぷ

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映画『あん』とは

映画『あん』

あなたが生きる理由ってなんですか?

そう問われたら何と答えますか?
人生のミッションステートメントを掲げている人もいるかもしれません。
実際、私の周りには何人かミッションステートメントを掲げている人がいます。しかし、多くの人は自分が生きる理由を探して旅をしていること自体が人生である人が大多数なのじゃないでしょうか?

幼いころから、オリンピックを目指してトレーニングに励んでいる人もいます。
また、私の周りには「将来プロのダンサーになる」と心に決めて、そして本当にダンサーになった人もいますが、多くは夢途中で敗れて、違った人生を歩んでいる人が多くいます。
しかし、”夢破れて”と書いたけれども、新しい人生をリスタートさせた途端生き生きとして、それまで悩み苦しんだ日々とは違った美しい表情をしているケースが多くあります。

そう、ひとが生きる理由とは、多くの人にとっては簡単に見つかるものでは無いのかもしれませんね。
特に、自分の生き方を、自分の望まないことが原因で狭められてしまった人にとっては、生きにくい世の中です。

この映画は、一人の老人が、とあるどら焼き屋にアルバイトで勤め始めたことによって起きるドラマです。
老人は、一生で一度で良いから外で働きたかったという夢を叶えたのです。
夢を叶えようと思ったのは、どら焼き屋の店長の姿を見かけてからなのです。。。

ささやきの映画

泣きました。
この映画を観て、映画館で泣いてしまいました。

ささやくように

ストーリーの美しさ、そして人生に時々訪れる理不尽にやるせない気持ちになる時に、人って悔し泣きするんですよね。
暖かい気持ちは伝わった時に人って、嬉し泣きするんですよね。
その悔しや、嬉しさなどの心の機微が、すっと私の心に入ってきた理由は、この映画全体に声を大きく出す人がいないからなのです。
主人公のどら焼き屋の店長 千太郎も、アルバイトとして勤めるおばあさん 徳江さんも、どら焼き屋「どら春」の常連客のワカナちゃんも、毎日のように入りびたる女子中学生たちも、どら焼きを買いに来るお客さんも。徳江さんの友人の桂子さんも。
みんな息をひそめるように、ささやかにひっそりと生きています。
ささやく様なセリフ回しが”当たり前の日常”感に溢れていて、私の心にスッと馴染んできたんですよね。
だから共感を呼んだのだと思います。

徳江さんの目を通した景色

美しいのはストーリーだけでは無く、どら焼き屋の窓を通して見る四季の移ろいも美しいのです。
ハンセン病を患ったために、人の目を逃れ息をひそめて、自然に耳を澄ませ語りかけてきただけの想像を絶する長い時間を経てきた徳江さんの目を通して眺めている景色なんだろうと思います。

やさしく説明してくれています

この映画の中で、どら焼き屋の常連客ワカナちゃんが、近所の子供に絵本を読んであげるシーンがあります。
ワカナちゃんが読み上げると、好奇心旺盛な子供がワカナちゃんに質問をします。
「どうして、こうなの?」
するとワカナちゃんは
「どうしてなんだろうね」
と反復するだけです。
決して、自分の意見や世に言う”正しい答え”は言いません。
そう、答えはそれぞれ違っていて、それぞれが求めて行くものなんだと思います。

映画の中で、ハンセン病について語られます。
仰々しいドキュメンタリーではなく、ワカナちゃんの目を通して、やさしくささやく様に反復して語られます。
それは絵本を読んでいて、
「どうして、こうなの?」と子供が質問して
「どうしてなんだろうね」とワカナちゃんが反復している様に語りかけられています。
ハンセン病については、人それぞれが受け止め方が違うと思います。
病気について嫌悪する人もいるでしょう。理解無い人たちを嫌悪する人もいるでしょう。
映画のスクリーンを通して、観る側がそれぞれの立場で、それぞれの気持ちで受け取れる様にささやかれています。

まとめ

徳江役の樹木希林という女優について、サイトを調べていたらこんな記事が見つかりました。

「いかに死ぬか?」全身ガンを患い死と向き合った樹木希林の語る死生観 | by.S

全身がんと闘っています。
2004年には網膜剥離によって、左目を失明しています。
いつ死ぬか分からない残りの人生です。
彼女の生死観に触れて、この映画は演じたのでは無いのかもしれないとふと思いました。
演じたのではなく、徳江役を通した彼女からのメッセージをもらった。。そんな気がしました。

いまもし、生きる理由を探したい、迷って苦しんでいるという人がいたら、ぜひ観て欲しい映画です。
人生の良きる理由が、そうそう簡単に見つからなくても、それはそれで、生きることに大義名分など必ずしも必要では無いってことに気付かされます。

映画のサイトのに書かれていた言葉を引用してみます。

私達はこの世を見るために、聞くために生まれてきた。

この世は、ただそれだけを望んでいた。

・・・だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。

原作はドリアン助川氏です。
本も出ているので、読んで見ようと思っています。

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