「蕎麦っ食い」です。
蕎麦大好きです。
ちなみに「蕎麦っ食い」とは、落語「そば清」に出てくる一節で
この蕎麦をズズズーッと食べる、と、あいつは「蕎麦っ食い」だ、なんて言うことがございます。何かってぇますと、「蕎麦っ食いは身の丈だけ食べる」と申します。身の丈、つまり身長ですな。食べてすんだ蒸篭(せいろ)を積み上げて行く、すると座布団の上にあぐらをかいて、肩の高さだけ食べるということですな。昔の蒸篭というのはごく小さい。今の半分くらいしかありませんでした。だから、一息にズズズーッと食べられた。でもいくら小さいからって、肩の高さまでってのはやっぱりそう簡単に食べられるものじゃない。これを食べるってぇと「あの人は蕎麦っ食いだ」って言われる。そう言われたいばっかりにみな無理しても食べたものですな。
「東西落語特選」より
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旧遊郭に存在する蕎麦屋
この一年は、3回名古屋に行く機会がありました。
そのうち2回は足を運んでしまった蕎麦屋があります。
ほんと美味しいんですよ。
その名は「伊とう」
〒453-0027 愛知県名古屋市中村区大門町13
最寄り駅は「日赤名古屋駅」「中村区役所駅」「本陣駅」の3か所。
どの駅からもだいたい徒歩8分から10分ぐらいです。
住所は中村区「大門町」
東京だと大門と書いて「だいもん」と読みますが、ここは「おおもん」と読みます。
大門町という名の由来を聞いたところによると、実際にあったという大門をくぐった先は遊郭だったのだそう。
最寄り駅に「本陣」があります。つまり戦が始まる前に武士たちが集まる場所が”本陣”
その本陣からほんの少し離れたところに遊郭があり、これから戦に行き自らの命がどうなるか分からないという未来が待ち受ける前に、遊郭で最後になるかもしれないひと時を楽しんだのです。
大門町には遊郭だった古い文化財級の建物がまだ、ちょいちょい残っています。
蕎麦「伊とう」は遊郭だった建物を手直しして使っている、趣のある蕎麦屋さんなのです。
古い建築、古民家が好きな私は、この話しを聞いただけで、すでにざる蕎麦一枚食べたぐらいの満足感を感じます。
伊とうの二階を見上げると、肘掛け窓に高欄(こうらん:手摺りのようなもの)があり、ここから艶やかに化粧をした女性たちが顔をのぞかせていたのでしょうか。
店内
それでは暖簾をくぐってみましょう。
店内は、他のお客さんがたくさんいたので、怯んでしまって写真を撮り忘れていました。
古い掛け時計や箪笥など、アンティークな家具がさりげなく置いてあり、インテリアを見ているだけで古えの時代を彷彿させてもらえます。
席からは中庭が眺められ石灯篭のある、風情のある風景が広がっています。
天ざるそば
それではさっそく注文をしてみました。
私は”迷ったら天ざるそば”と決めています。
お味はとにかく美味い。
蕎麦は二八という蕎麦八割:小麦二割で製麺されている蕎麦と、蕎麦十割との二種類用意されてあります。
今回は十割蕎麦にしたので、口に含んでからの蕎麦の香りがとても際立ちます。
蕎麦の茹で方は、ほんのりいい塩梅に腰があるタイプで、私の好みにどんぴしゃり。
最近は、固めの蕎麦が主流になって来ていますが、固けりゃ良いというものでも無く、もうちょっと茹でると固さの中にもしなやかな弾力が出るのに・・と残念な物も多いです。
しかし、伊とうの蕎麦は、程よく腰がありその上で喉ごしの良いしなやかさも併せ持っています。
天ぷらは、衣が軽やかでサクッと揚がっていて、出汁の効いた天つゆ・おろし大根とが良い具合に絡まってくれます。
藻塩も添えられていて、塩で蕎麦を食べてよし。天ぷらを塩で食べて良し。食べ方のバリエーションも広がります。
天つゆも蕎麦つゆも出汁が利いていて、関西の淡口の上品さと関東のしっかりした味わいのちょうど中間の良いとこどりという感じででしょうか。
こちらは別の日に食べた「蕎麦豆腐」
トッピングの蕎麦の実のカリっとした歯ごたえがあり、柔らかさとカリっととの食感のコントラストが美味しさを際立たせます。
あともう一品欲しい時やお酒のアテにおすすめです。
まとめ
その土地にはそれぞれ「蕎麦の名店」という所があります。
名古屋にも名店がたくさんあると思うのですが、今のところ名古屋に行くたびに「伊とう」にリピート通いしてしまっいます。
それぐらい私を惹きつけて止まないお気に入りの蕎麦屋さんです。
伊とうの情報
◆営業時間
昼 11:30〜15:00 (LO 14:30)
夜 17:30〜21:30 (LO 21:00)
※昼・夜とも蕎麦売切仕舞い
◆定休日 月曜日・第二火曜日
TEL 052-471-3850
—伊とうホームページより—
ランチや夜ともに人気で混んでいるので、なるべく予約することをオススメします。