2016年8月4日 渋谷オーチャードホールで「エトワール・ガラ 2016」の14:00開演のマチネ公演を楽しんで来ました。
平日の昼間でしたが、やはりパリ・オペラ座バレエ団ファンにとっては待ち遠しい公演のため、多くの観客が来場していました。
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エトワール・ガラの出演者
エトワール・ガラとは、パリ・オペラ座バレエ団の現役ダンサーが主な出演者となります。
パリ・オペラ座バレエ団は、階級制となっています。
頂点に立つ「エトワール」
重要な役を踊る「プルミエ・ダンスール(女性はプルミエール・ダンスーズ)」
役付きのダンサー「スジェ」
カドリーユのリーダー「コリフェ」
群舞の「カドリーユ」
このヒエラルキーの頂点に立つエトワール・プルミエール・スジェまでの選抜メンバーとなります。
バレエ団はパリでの公演や、世界各国でのゲスト出演もやっていますので、全員日本に来るのは難しいためもありますし、実力のあるスジェクラスがヴァリエーション(ソロ)や、グラン・パ・ド・ドゥ(男女2名で踊る)を舞台で披露する恰好の機会ともなり、観ている方は、次のエトワール候補の目星を付けたりする楽しみもあります。
また、年によっては若いメンバー編成の時もありそれはそれでフレッシュな公演内容となり、面白いものです。
17人いるエトワール(2016年8月現在)のうちの6人が来日、つまり1/3が来ているというなかなかの豪華ラインナップでしたが、エトワールになる前からファンのミリアム・ウルド=ブラームがメンバーに入っていなかったのはちょっと残念。
しかし、2016年2月にアデュー公演(パリ・オペラ座引退公演)を終えて間もないバンジャマン・ペッシュがメンバーに入っていたのは、日本のパリ・オペラ座バレエ団ファンを裏切らないキャスティングだと思いました。
さて、”ガラ”公演とは
バレエの演目には全体を1つのストーリーとして展開する「全幕もの」があります。
しかし、これには多数の出演者が必要になります。それに対して「ガラ」とは、いろんなストーリーの主役が踊るハイライトシーンを抜粋する構成となります。
出演者は全て主役であり、見どころのみを見せてくれます。
また、ストーリー性の無いコンテンポラリー作品が多く取り入れられる事ができます。
ガラの構成
演目
この日はAプログラム
第一部
「グラン・パ・クラッシック」ローラ・エケ & ジェルマン・ルーヴェ
「スターバト・マーテル」エレオノラ・アバニャート & バンジャマン・ペッシュ
「シンデレラ・ストーリー」より シルヴィア・アッツォーニ & アレクサンドル・リアブコ
「カラヴァッジョ」より レオノール・ボラック & マチュー・ガニオ
「三姉妹」より パ・ド・ドゥ アマンディーヌ・アルビッソン & オードリック・ベザール
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 ドロテ・ジルベール & ユーゴ・マルシャン
第二部
「くるみ割り人形」第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥ レオノール・ボラック & ジェルマン・ルーヴェ
「クローサー」より エレオノラ・アバニャート & オードリック・ベザール
「Sanzaru 」 シルヴィア・アッツォーニ & アレクサンドル・リアブコ
「瀕死の白鳥」ドロテ・ジルベール
「感覚の解剖学」より ローラ・エケ & ユーゴ・マルシャン
「アザーダンス」 アマンディーヌ・アルビッソン & マチュー・ガニオ
「ル・パルク」より解放のパ・ド・ドゥ エレオノラ・アバニャート & バンジャマン・ペッシュ
超個人的感想
「グラン・パ・クラッシック」
さすが素晴らしいの一言です。オープニングにふさわしい、エトワールの貫録を見せつけられました。
恥ずかしながら昔このグラン・パ・クラッシックを踊ったことがあるのですが、テクニックの連続。。必死の思いをして踊ったことが蘇りました。女性のヴァリエーションでの一番の見せ場の、バロネをしながらテンポ良く前進して盛り上げていくところが、通常の振り付けだと右足軸ですが、左足軸。それでも違和感無く美しくまとめているところは、世界のエトワールならではでした。
「スターバト・マーテル」
出演者の一人でもあるバンジャマン・ペッシュが2011年に振り付けたコンテンポラリー作品。
エレオノラ・アバニャートとバンジャマン・ペッシュ本人の出演で観られるのはラッキーです。
「スターバト・マーテル」とは13世紀に作られたラテン語の聖歌で、十字架の上で死の苦しみを受けるイエス・キリストを歌った歌とのこと。
聖母マリアのような薄ピンクの被り物と同じく薄ピンクのセミロングの衣装がエレオノラアバニャート自身が持つ清楚な美しさをより引き立たせており、その美しさがイエスの死の悲哀を一層駆り立てるという、まるで宗教画のようなシーンが再現されていました。
「カラヴァッジョ」より
この作品が第一部で一番好きなコンテンポラリー作品でした。
ルネサンスからバロックへの移行期に活躍した画家で有名なカラヴァッジョ。写実性を追求した作品とスキャンダラスな人生、ルネサンスとバロックなど”二面性”をテーマ。
レオノール・ボラックはベージュ色のバストのみを隠したチューブトップとショートパンツ。マチュー・ガニオはベージュのショートパンツのみ。遠目でみるとまるで裸で絡み合う男女のように見えるエロティックな衣装でしたが、二人の鍛え抜かれた、まるで彫刻の様な姿がエロティックを超えた美しさを放っていました。
特に、イケメンで日本を問わず世界中に女性ファンの多いマチューは、クラクラするような美しさ。それだけで眼福でした。
「くるみ割り人形」第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
踊る二人が登場した瞬間に目を奪われたのは、レオノール・ボラックのゴールドを基調とした豪華な衣装。ティアラからボディからチュチュから、いったいどれだけのビーズが付いているのだろうか?と思うと、ため息が出るような美しさ。
特に小柄なレオノール・ボラックが着ると、金平糖の精というよりもお姫様そのもの。
あの衣装が着られるのなら3ヶ月断食して体重を落としても良いと思えるほどのもの。
パリ・オペラ座は、世界で活躍するデザイナーが衣装をデザインすることも多々あり、衣装の素晴らしさも見どころの一つなのだとあらためて思い知らされました。
「Sanzaru」
面白いタイトルだと思ったら「見ざる・聞かざる・言わざる」の『三猿』なのだと。確かに衣装は臙脂色でぴったりとした長袖のレオタードで装飾も少なく、猿のイメージにも近いものがありました。
日本の格言をテーマにしているのに、日本初演なのは意外や意外。
「アザーダンス」
パリ・オペラ座のリハーサルピアニストである久山亮子さんのピアノ演奏でのアザーダンス。
ショパンの調べと薄水色の衣装を見ていたら、踊っているアマンディーヌ・アルビッソンとかつて観たオレリー・デュポンの姿が重なって見えました。
清楚な薄ブルーの衣装がとてもよく似合っていたオレリー。オレリーもアデュー(引退)公演を終え、パリ・オペラ座の舞台では彼女を観ることができない寂しさを今さらながらに感じました。
「ル・パルク」より解放のパ・ド・ドゥ
このパ・ド・ドゥは私のもっとも好きな演目です。自分が初めて観たときは、マニュエル・ルグリとオレリー・デュポンだったような?
モーツァルトのもの悲しい曲に合わせて男女の切ない愛を表現するパ・ド・ドゥ。エレオノラ・アバニャート & バンジャマン・ペッシュとのコンビで観られたことはまたもやパリ・オペラ座の世代交代を感じました。もちろん、エレオノラ・アバニャート & バンジャマン・ペッシュのコンビも素晴らしいです。そのバンジャマン・ペッシュもアデュー。。どんどんスターが代わっていく、つまり新陳代謝が行われているパリ・オペラはいつまでも”永遠の美”の象徴でいられるのだと感じました。
まとめ
しばらく公演を観に行くことから離れていましたが、久しぶりパリ・オペラ座の舞台を観に行くことができました。
久しぶりのオペラ座は個人的には”世代交代”を強く感じられたものとなりました。
「昔が良かった」と言いたいわけではなく、今も変わらず最高のクオリティを保ち続けており、期待を裏切らないのは、決して安くないチケットを買ったファンにとっては喜ばしいことだと思います。
良いものは良いものですね。
久しぶりに観たことによって、また舞台鑑賞熱が再発しそうです。
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